隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

「あっちの机で一緒に作業しない?お互いテーマが近いから参考になるのあったら教え合おうよ、きっと効率良いし」

 男の人を過剰に意識する斉木さんだから、もしかしたら作業に集中できないと断られるかもしれない。そもそも俺と関わり合いたくないかもしれない。あくまでも平静を装って軽い感じで誘ってみたものの、自分の脳内はかなり後ろ向きな考えで溢れかえっていた。


「…うん、いいね。そうしよ」

 が、ありがたいことに斉木さんは遠慮がちに提案を飲んでくれた。相変わらず目を合わせてはくれないが、きっと嫌悪感は持たれていないんだろうと心の中で安堵のため息をつく。


 それからは二人で集中して作業に取り組み、お互いに参考になる箇所を見つけては教え合い、今日の分の課題は順調に進めることができた。心なしか斉木さんから緊張する様子が薄れ、かなり自然体で接していると感じるときもあった。

(緊張でガチガチになって沸騰する斉木さんもかわいいけど……)

 やっぱり自然体で自分に関わってくれることが嬉しかった。他の男の人とはきっと違うんだという特別感。この特別感をできればずっと感じていたい、そんな邪な欲求が心の片隅から僅かに湧いてくるのが自分でもわかる。

「あ、もうすぐ時間だね。ちょうどいいところで終われたかも」

 斉木さんがスマホの時計を見てふーっと一息つく。

「斉木さんありがとう。おかげで思ってたより進んだと思う」

「こちらこそ!誘ってくれてありがとう」

 お誘いなんて星の数ほどあるだろうに、こうやって感謝の言葉がすらすら出てくるところに彼女の性格の良さが滲み出て微笑ましい。
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