隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
「わー、やっぱり人多いね」
たどり着いた丸の内仲通りに面するフレンチカフェは、お昼時は過ぎているはずなのにたくさんの人で賑わっていた。歩行者天国を利用して軒先までパラソルとテーブルが広がっており、通り一体が異国情緒溢れている。こんな洒落たお店を見つけてくるアンテナは、さすが女子だなと遠目に感心してしまう。
「ん〜でもテラス空いてるからきっと大丈夫かな、大野くんテラスでも良い?」
本当は男性側がリードすべきなのだろうが。斉木さんはかなり慣れた様子で店内に入り店員さんに声をかける。するとすぐにテラス席を案内され、そこにようやく腰を落ち着けることができた。ずっと立ちっぱなしで書店内をうろうろしていたからさすがに足が疲れてきていたところだった。
「お店見つけてくれてありがとう」
ランチを注文し、水を飲んで一息つくと、そう切り出した。
「…ううん、こちらこそ行きたいとこ付き合ってくれてありがとう」
隣に並んで歩く時や、書店内で目を輝かせている時には自然体だった斉木さんだが、今こうして席を向かい合わせにして座っていると、また少し緊張している様子に戻った。それでも、きっと男性の中では自分が一番自然体の斉木さんに近い人間だろう。そういった特別感による自負が自分を喜ばせた。