隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

ただの美人

 都心の大学付近には大学生向けの飲食店が立ち並び、日が傾き始めたこの時間帯でも大人数で会話を楽しむ人、一人で静かに勉強している人、さまざまな人の様子が見受けられた。
 
 俺たちは女子の提案で昨年オープンしたばかりの、フレンチトーストが美味しいと評判のベーカリーカフェに入った。中途半端な時間だったこともあり、8人という大所帯だったにも関わらず4人がけのテーブルを2つ見つけ、運良く座ることができた。 


 入学したばかりに行われた一泊のオリエンテーション旅行の時には、学科全員で顔を合わせたものの、その後結局はいつも大体同じようなメンバーで固まって講義を受けていた。だから、プレゼミ生の顔ぶれはかなり新鮮なものだった。

 そこから話を聞けば大体が一人暮らしをしている人ばかりで、それぞれの食生活事情や地元の話、一年次の単位取得状況などたわいもない話をした。

 しかし、どんな集まりであっても話題は段々と一般的なことから少し個人的なことや込み入ったことに移行していくものである。
 
「そういえばさ、斉木さん急にどうしたんだろうね?」

 俺の心の片隅に引っかかっていた疑問を、紘が単刀直入に切り出した。
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