隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

涼太さん④


「……里香、里香」

 意識の彼方から私を呼ぶ声がする。少し低くて柔らかくて、落ち着いた私の好きな声。

「……里香、起きた?」

 まだ目を閉じてこの声と温もりを骨の髄まで感じていたい。男の人らしいごつごつとした厚みのある上半身に触れてこれは夢ではないんだなとうっすらと気づき始める。


「涼太さんだぁ…」

 目を開けて顔に力が入らないまま笑いかけると、涼太さんも目を細めて笑い返してくれる。

「もう6時になるよ。帰らなきゃじゃない?」

(…そうだ、涼太さんとエッチして、そのまま眠くなって……)

「寝ちゃった。ごめんなさい」

「ううん。俺もちょっと寝てたし、かわいい寝顔見られて眼福です」

 涼太さんはベッドに横たわったまま私の方を向いて肩肘をつく。微笑みかける表情が温かい。

 頭が少しずつすっきりしてくると、先ほどの涼太さんとの情事が脳内で再生される。思い出すととっても恥ずかしいことの連続で、はしたない女だとか思われてないかな、とちょっと心配になってしまう。

 私は涼太さんの胸の中に顔を埋めて、動物のように額を胸にごしごしと擦り付けた。

「どうしたの?」

 変態だとか下品だとか思われてなければいいんだけど、でも自分の気持ちはきっと正直に伝えたほうがいいんだろうと思って。私は顔を上げて涼太さんの目をじっと見る。

「あの、……とっても気持ちよかったです……」

 前に付き合っていた人とはお互いが初めて同士で、まさに手探りだったから余裕もなかった。でも相手は気持ち良さそうだったし1回経験したら頻繁に求めてもきた。そんな彼とは反対に、私には正直エッチの良さなんて全然分からないってほど、行為に前向きじゃなくて。

 だから、涼太さんとのエッチに私はある種の衝撃を受けたのだった。

 涼太さんは一瞬目を見開いたかと思うと、見つめ合う私の顔に手を伸ばす。

「いっ…!?」

 キスしてくれるのかな、なんて期待したけど大間違いで。

 涼太さんは私のほっぺたを軽く横に引っ張った。

「かわいい顔でそういうこと言わないの」

 涼太さんはそう言って、困ったような顔をして笑う。
  
(言っちゃだめだったのかぁ)

 どこまで自分の気持ちを伝えて、どこから自分だけの気持ちにしたらいいのか分からない。恋愛経験の乏しい私は、その都度体当たりで学んでいくしかないんだろう。
< 63 / 76 >

この作品をシェア

pagetop