Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜




 約束の一月(ひとつき)が過ぎようとしているのに気が付いたのは、オリヴィアよりもエドモンドの方が先だった。

『私を見ていてください』
 と、オリヴィアは言った。

 そしてオリヴィアは、見事に成功したのだ。エドモンドはもう自分が、彼女から目を逸らすことができない身体になっている事実と向き合わなければならなくなっていた。

 物事をきちんと考えることができなくなっている。

 ここ数日のエドモンドはつねに緊張していて、怒りやすく激しやすく、また放漫でさえあり、唯一心が安らぐのはオリヴィアを目にしている時間だけだった。その安らぎも長続きするものではなく、彼女が自分の方を見つめ返してくると……甘い地獄へと変わる。

 血が逆流してくるような感覚――。
 息苦しくなって、胸をかきむしりたくなり、何でもいいから怒鳴りつけたくなるほど気が短くなった。

 ひとまずの解決を求めて、普段は吸うことのない葉巻に手を出してみたりした。葉巻の先をナイフで切り、火をつけて吸い込むと、ピリッとした煙が器官に回ってしばらくの間は荒くれだった神経を休める。
 だが、それだけだった。

 悪魔はエドモンドをあざ笑うかのように戻ってきて、再び彼を苦しめる。


 それでも、太陽のあるうちはまだよかった。


 夜──木々も寝入る宵の闇があたりを覆うと、エドモンドの情熱は静かに目を覚ました。エドモンドの寝室は無駄に広く、一人で眠るにはあまりにも寂しいものであると、今さらながらに気が付かされた。

 窓から落ちる月の光に照らされて。

 夜の寝室を落ち着きなく歩き回るエドモンドは、さながら中世の屋敷にさまよう騎士の亡霊のようだ。月を見上げ、夜を呪い、そして……隣の小さな寝室に繋がる扉を恋しそうに見つめる蒼白の騎士。

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