Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 オリヴィアは思わず目をしばたたかせた。

 目の前にいる皺だらけの老人は、真っ白な髪を四方に散らばせていて、実際の身長よりずっと大きく見える。それでなくとも強烈な個性で迫力には事欠かない人物だったから、オリヴィアは大変な勇気をふりしぼらなけれ彼と対峙することができなかった。

 深い瞳は加齢により少し濁っているが、それでも元は活力に溢れた緑だったのが隠せていない。

「あなたが……」

 オリヴィアが呟くと、興奮したままのマギーが大きく頭を振った。

「公然の秘密なんだよ、マダム。テラブって苗字も、本当はただバレットを逆さにしただけなんだ。ノースウッド伯爵の継承権をうるさく言われたくなくてね、表向きには隠してるけど、この辺じゃ皆知ってるよ」

「それは……でも、どうして……」

「それはこの偏屈じじいが説明してくれるだろうね。さあ、ジョー、こっちに来な! マダム、この男が何か悪さをしようとしたら呼ぶんだよ。もっとももう、死んだ魚も相手にできないくらいの老いぼれだけどね!」

 辛辣にそう言ったマギーは、戸惑うジョーを強引に引きずりながら食堂を出て行った。
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