Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
「ヒューバートじゃないか」
酔っ払った大男は、嫌らしい笑みに唇をゆがめながら、さっきまでとは少し口調の違う猫なで声を出しながら言った。
「ちょうどいい、私は嫉妬深いたちではないんだ。君とお楽しみを共有するのも悪くないな」
オリヴィアは当然のように、彼に助けを求める視線を送った。
しかし、ヒューバートは少し考えているようだった。
どんなに鈍い人間でも、今のこの状況を理解するのは難しくないはずだ。
ヒューバートはこの屋敷の主人で、オリヴィアとエドモンドはその客人である。オリヴィアをこの魔の手から救い出すのは、彼の紳士としての義務であるように思えた。
が——
「あなたは男性の心を狂わせるのが得意のようだ、オリヴィア」
ヒューバートは意味ありげにそう言って、オリヴィアを頭のてっぺんからドレスの裾まで食い入るように見つめた。
そのときになってやっと、オリヴィアは自分のドレスと髪が男と同じように乱れているらしいことに気づいた。
ああ!
両手ですっかりずれていた襟元を隠したオリヴィアは、もう一度ヒューバートに懇願の視線を走らせた。
しかし、オリヴィアにさえ、ヒューバートにその気がないのがすぐに分かった。
彼はこの酔っぱらいの提案に心を傾けているのだ……。
どうすればいい? どうすればいいの?