どうも、結婚から7年放置された妻です
何とアルベルティーナは、これでも一応王家の一員なのだ。生まれは先日まで戦を行っていた隣国とは違う、サルドネと国境を有した国の伯爵家の娘なのだが、十歳で王族に嫁いだのである。
生まれたばかりのコンラードと兄である王太子の年の差は二十二歳。親子ほどの差があり、さらにその翌年、王太子と妃との間に男児が生まれた。
二人はすくすく成長していき、やがて家臣や貴族たちにその成長具合が知られるようになった。
コンラードはどうやら、父親に似たらしい。勉学にも剣にも優れ、人を惹きつける才は国王が持つ気質とそっくりだった。
文字の覚えも早く、誰であっても物怖じしない介達なコンラードに、彼の兄の妻、当時の王太子妃は危機感を抱くようになった。
夫はお世辞にも彼の父の気質を全て受け継いでいるとは言えず、あり大抵に言えば普通であった。
彼との間に生まれた王子がもしもコンラードよりも劣っていたら。
貴族たちは夫の次の代にコンラードを求めるようになるのではないか。彼を担ぎ上がるのではないか。そう考えるようになった。
「夫がまだ十歳になる前に、お父さんが亡くなってしまい、環境が一変したそうなんです。お母さんと引き離されて、彼は兄嫁に育てられることになってしまって」
「そうか。それは……色々あっただろうな」
コルドが痛みを堪えるように目を伏せた。
妙に実感がこもっているように聞こえるのは気のせいだろうか。
「幸いにも夫には少ないながらも親身になってくれる家人がいました」
「そうか。それはよかったな。で、そこからどうして結婚という流れになったんだ?」
「それはですね……」
夫が八歳になる頃、前王は病に倒れ、闘病の甲斐なく翌年息を引き取った。
コンラードの兄が即位し新たなサルドネ王となった。彼は、王妃となった妻から助言を受け、異母弟にロッシュヴァンの土地と公爵位を与えた。
それ以降コンラードは公の場ではロッシュヴァン公爵と呼ばれるようになったのだが、住まいは依然として宮殿で、王妃となった兄嫁の監視下にあった。
王妃はこれだけでは足りぬと考え、コンラードを結婚させることにした。
「勝手に大口の取引先の娘さんと縁を結ばれたら、自分の生んだ息子が家を相続できなくなると危惧し、だったら先に後ろ盾などまるでない娘を宛がってしまおう。そうして選ばれたのがわたしです」
言葉を変えたが、勝手に有力貴族のご令嬢と縁を結ばれたら困るが、正しい。
「……なるほど」
「わたしは財産分与で夫が与えられた土地にある家で暮らすことになりました。結婚すると聞いていたのにいざ引っ越してきたら夫が不在。最初はびっくりしましたが、夫の味方の家人は、お家騒動には言及せずに、夫は寄宿舎で勉学にはげんでいるのだとわたしに説明しました」
夫の味方の家人というのが、前王からコンラードを託されたドナシアンという名前の元騎士で、現ロッシュヴァン公爵家の家令である。騎士を引退したのち前王の侍従となったドナシアンは、主不在のロッシュヴァンの管理を代わりに行っていた。
なぜならコンラードは相変わらず王妃の監視下に置かれており、もらった土地に赴くことすらできなかったのだ。
ドナシアンは、主に代わり王都とロッシュヴァンを往復し、アルベルティーナの教育にも手を割いてくれた。家庭教師を呼び寄せ、貴族の娘に必要な教育を授けてくれたのだ。
ちなみに勉強以外では自由にさせてくれたから、庭師に弟子入りして家庭菜園を楽しんでみたり、近くの牧場で乳しぼりをマスターしたり、ニワトリに追いかけられたりと田舎生活を満喫していた。
「夫が不在でも何だかんだと楽しく暮らしていたわたしは、家令の説明を信じ込んでいたので、夫に手紙を書きました。こちらでの暮らしは充実しています。旦那様も勉強に打ち込んでいらっしゃるでしょうか、とかなんとか」
「そうか。文通という手段はあるからな。離れていても互いを知ることはできるわけだ」
生まれたばかりのコンラードと兄である王太子の年の差は二十二歳。親子ほどの差があり、さらにその翌年、王太子と妃との間に男児が生まれた。
二人はすくすく成長していき、やがて家臣や貴族たちにその成長具合が知られるようになった。
コンラードはどうやら、父親に似たらしい。勉学にも剣にも優れ、人を惹きつける才は国王が持つ気質とそっくりだった。
文字の覚えも早く、誰であっても物怖じしない介達なコンラードに、彼の兄の妻、当時の王太子妃は危機感を抱くようになった。
夫はお世辞にも彼の父の気質を全て受け継いでいるとは言えず、あり大抵に言えば普通であった。
彼との間に生まれた王子がもしもコンラードよりも劣っていたら。
貴族たちは夫の次の代にコンラードを求めるようになるのではないか。彼を担ぎ上がるのではないか。そう考えるようになった。
「夫がまだ十歳になる前に、お父さんが亡くなってしまい、環境が一変したそうなんです。お母さんと引き離されて、彼は兄嫁に育てられることになってしまって」
「そうか。それは……色々あっただろうな」
コルドが痛みを堪えるように目を伏せた。
妙に実感がこもっているように聞こえるのは気のせいだろうか。
「幸いにも夫には少ないながらも親身になってくれる家人がいました」
「そうか。それはよかったな。で、そこからどうして結婚という流れになったんだ?」
「それはですね……」
夫が八歳になる頃、前王は病に倒れ、闘病の甲斐なく翌年息を引き取った。
コンラードの兄が即位し新たなサルドネ王となった。彼は、王妃となった妻から助言を受け、異母弟にロッシュヴァンの土地と公爵位を与えた。
それ以降コンラードは公の場ではロッシュヴァン公爵と呼ばれるようになったのだが、住まいは依然として宮殿で、王妃となった兄嫁の監視下にあった。
王妃はこれだけでは足りぬと考え、コンラードを結婚させることにした。
「勝手に大口の取引先の娘さんと縁を結ばれたら、自分の生んだ息子が家を相続できなくなると危惧し、だったら先に後ろ盾などまるでない娘を宛がってしまおう。そうして選ばれたのがわたしです」
言葉を変えたが、勝手に有力貴族のご令嬢と縁を結ばれたら困るが、正しい。
「……なるほど」
「わたしは財産分与で夫が与えられた土地にある家で暮らすことになりました。結婚すると聞いていたのにいざ引っ越してきたら夫が不在。最初はびっくりしましたが、夫の味方の家人は、お家騒動には言及せずに、夫は寄宿舎で勉学にはげんでいるのだとわたしに説明しました」
夫の味方の家人というのが、前王からコンラードを託されたドナシアンという名前の元騎士で、現ロッシュヴァン公爵家の家令である。騎士を引退したのち前王の侍従となったドナシアンは、主不在のロッシュヴァンの管理を代わりに行っていた。
なぜならコンラードは相変わらず王妃の監視下に置かれており、もらった土地に赴くことすらできなかったのだ。
ドナシアンは、主に代わり王都とロッシュヴァンを往復し、アルベルティーナの教育にも手を割いてくれた。家庭教師を呼び寄せ、貴族の娘に必要な教育を授けてくれたのだ。
ちなみに勉強以外では自由にさせてくれたから、庭師に弟子入りして家庭菜園を楽しんでみたり、近くの牧場で乳しぼりをマスターしたり、ニワトリに追いかけられたりと田舎生活を満喫していた。
「夫が不在でも何だかんだと楽しく暮らしていたわたしは、家令の説明を信じ込んでいたので、夫に手紙を書きました。こちらでの暮らしは充実しています。旦那様も勉強に打ち込んでいらっしゃるでしょうか、とかなんとか」
「そうか。文通という手段はあるからな。離れていても互いを知ることはできるわけだ」