どうも、結婚から7年放置された妻です
 薄茶の髪に白いものが混じり始めているものの、がっしりした体つきと姿勢の良さで実年齢よりも若く見える壮年の男と、つい一昨日別れたばかりの銀髪の青年騎士だ。

「ドナシアンに、コルドじゃないの」

 なぜだか顔から血の気を引かせている二人に、アルベルティーナはのほほんとした声で「どうしたの?」と尋ねた。

「おおおおお嬢様、わたくしめを一発、いえ、千発でも殴っていいので、どうか、どうか、コンラード様との離婚だけは勘弁願います」

 ドナシアンがガタガタブルブル震えながらアルベルティーナに縋りついた。

「アルベルティーナ。事情はこのドナシアンから聞いた。今まで放置してしまったことを謝罪させてくれ!」

 矢継ぎ早に言われたアルベルティーナは、ドナシアンとコルドを交互に見つめた。

 どうしてこの二人が連れ立って自分の前に現れたのだろう。
 繋がりが分からなくて首を傾げながら、やはり交互に二人の男性に視線を向ける。

 コルドと視線がかち合った。
 彼は、一度アルベルティーナから視線を逸らしたあと、決意を込めたように、眼差しに力を込めて見つめてきた。

「お、俺が……きみの夫のコンラード・ル・ソシュール・ロッシュヴァンだ」

 言われた言葉が頭の中に入ってこない。
 だって、彼は荷馬車で王都に帰還していた、ただの騎士だったはず。

 いや、確かにガラの悪い帰還兵を一言で蹴散らせるほどの階級ではあったはずなのだが。

(えっと、目の前の男性がわたしの夫? うそ……。いや、でもロッシュヴァン公なんて名乗ったら詐欺罪で絞首刑よ……)

 貴族の、それも臣下降下で誕生した公爵位を偽りで名乗った先にあるのは首つり台である。命を賭けた詐欺など、割に合わなさすぎである。

 とりあえずアルベルティーナは、一番尋ねやすい男へ矛先を向けることにした。

「説明……してくれるのよね? ドナシアン」

*

 場所を移して、騎士団本部の応接間にてアルベルティーナは、ドナシアンとコンラードの二人から事情説明を受けた。

 九割はドナシアンの独白と謝罪であったが。
 大体のところは彼から以前受け取った告白文と同じ内容であった。

 違うのは、そこに本日初めて対面を果たした夫コンラードの謝罪が載せられたことである。

「本当に、本当にすまなかった。結婚していた事実を今日知らされたとはいえ、それはアルベルティーナには何の関係もないことだ。長い間悲しい思いをさせてすまなかった」

「知らなかったとはいえ、わたしは夫本人に夫との馴れ初めを話してしまったわけで……」

 夫と分かる前にただのコルドとベルとして出会ってしまっていたため、どうにも格好がつかない。
 彼と何を話していいのか分からないため、アルベルティーナは言いやすい方へまず先に言うことにした。

「結婚の真相の告白が、これから戦場に向かいますってあのタイミングなのも、どうかと思うわよ。怒りたいのに怒れないじゃないの」

「申し訳ございません」
 ドナシアンが深々と頭を下げた。

「ここからが本題なんだが……。俺と一から関係を築いてほしい」
「で、でも……」
「七年も放っておかれて離婚したいというきみの気持ちも分かる。しかし……今日結婚していることを知らされた俺としては……きみのことをきちんと知っていきたいんだ」

 そう言って彼はポケットから何かを取り出した。

「これを贈ってくれたのは、きみだろう?」
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