重いけどいいの?お嬢サマ
矢絃からスマホを受け取り、私はある人物へ連絡した。
「……今から行くから」
その一言だけを言って電話を切る。
「ごめん慧!……ちょいと用事があるので早退しますって先生にうまく誤魔化しといてっ」
「さすがは美青!わたしの親友!愛してるー!それなら任せとけ。お安い御用さ」
秋葉さんたちにもごめんと告げて、急遽佐藤に車をまわしてもらい、じーちゃんのところへ乗り込んだ──
騒がしいと文句を言われたけどそんなの知らない。
ごっつい椅子に座るじーちゃんのもとへ行って、机を叩いた。
今まで送りつけてきた見合い写真のこと、ドレスのこと、勝手に進めてきた縁談のこと、全て混ぜこんだ怒りをぶつけにぶつけた。
何を口にしたのか、言えない程汚い言葉も使った。
言葉だけで、絶句させるほどに。
そんなじーちゃんの顔を見て、言ってやった──そう思ったのに。咳払いひとつで顔色を戻された。
「……ただ嫌だなんだと騒いで許される歳ではない」
「嫌と騒がれることをしてるはそっちでしょ」
顔色を戻されたからって、引き下がったりなんかしないから。
睨まれたってちっとも怖くない。余裕よ、余裕。
「断るにはそれなりの理由があってのことか?それとも単に嫌と言うだけならこちらにも考えがあるぞ」
「その考えとやらはなに」
「無視続けられ、断られ、はいそうですかと言ってられんからな。……せっかく式の話まで進んでいたんだ」
ええ、勝手にね。
私の知らないところでよくそんなことをすすめられたものよ。
「そうだな……──君はどうしたいかね」
え?
君……じーちゃんは私の後ろを見て言った。
咄嗟に振り向けば……