重いけどいいの?お嬢サマ
こちらへ、と側近が奏矢たちと先に中央へ向かう。その間二人は振り向きざまに、
"任せろ"
"勝ってくる"
──そう口で伝えてくれた。
だから私は大きく頷いて返す。
大丈夫。絶対に二人が勝つ。
「……おっと、美青さんの席は用意しているよ」
お坊ちゃんにそう言われ示された席は、中央のテーブルの真ん前。
あんなところに座れば、変に注目の的になる。
「残念だけど、私はそんなマジマジとみるつもりはないの」
「どうしてだい?大事な勝負だろうに。心配じゃないのかな」
「ええ、とても心配だわ。こんな大々的にやっておいて……」
貴方が負けた時に泣かないか──
嫌味たっぷりな表情で伝えれば、一瞬だけ引きつせた顔をするお坊ちゃん。
だけどすぐさま爽やかな笑顔を作る。
「泣くのはどちらかな。君こそ……負ける執事くんを見て泣くのでは?」
嫌味には嫌味が返ってくるのか。
お坊ちゃん的に嫌味のつもりではないのもしれないけど、その本心は分からない。そもそも分かりたくもない。
「私は、私自身が笑顔で帰れることを期待してるわ」
奏矢と矢絃も笑顔で。
「そうかい。まぁゆっくりご覧よ、自分の未来と」
"主の未来を守れると過信し絶望する執事くんを──"
最後に一言添えて、お坊ちゃんも中央の席へ向かった。