重いけどいいの?お嬢サマ


誰もいないけど、咄嗟にスマホの画面を手で塞ぐ。わるーい、なんて謝る慧にゆっくりと手をどかし咳払い。


『つい、気になって』

「私が私に聞いてるところよ。惹かれていた理由が見えなくて……一緒にいすぎて分からなくなってるのかも」

『わたしも春夏冬のドジぶりとか、かわいーとことかわりと漠然としてるからな……。でも一緒にいるから、積もるに積もった結果なのかなぁとも思う』


積もるに積もった結果……


繰り返す日々の中で、徐々にってこと……。



『笑ったり、バカやったり怒られたりさ。するだろ?』

「ええ……そうね」



向けられていた表情や言葉一つが積み重なっていった、そう言われれば、腑に落ちるものはある。

頭に過ぎる奏矢の顔も、声も、言葉も。


一つひとつ思い出していくと、胸が静かに高鳴っていくのを感じた。



「慧」

『ん?』

「おかげで分かった気がする。私が、奏矢に惹かれた理由が」

『そうか?それはじっくり話し合いたいものだな』


にっ、と笑う慧に、私も自然と笑みがこぼれる。


でも、理由が分かったからといって、自分からは好きとは言えない。
お互いの立場もあるけれど、そんなのがなくても私はこの気持ちを秘めたまま過ごしていくのだと思う。

慧は……どうするのか分からないけど。

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