ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「うかうかしてると、取られるぞ。さっさと言うこと言って、付き合っちゃえよ」

「俺は別に……っ」

「いや、お前が橘さんのこと気に入ってるのはだいぶ前からバレバレだぞ、大和」

 そう言って、松葉は俺の肩をポンッと叩いた。昔から口数は少ない分、こいつはやけに勘が鋭いのである。

「圭人の言う通りだよ。‘‘トンビに油揚げを攫われる’’の言葉そのままに、さっさと他のヤツに出し抜かれても知らんぞ。……この前山に行って、昼飯のパンをトンビに盗られた俺が言うのもなんだが」

「……それは、災難だったな」

 生返事をしながらも、頭の中では嫌な想像が繰り広げられていた。

 誰からどう見ても、橘さんは男女問わず人から慕われるタイプだ。可愛いらしい外見で優しい性格ということもあり、男から言い寄られることも多々あるだろう。

『すみません、黒崎さん。実は最近、お付き合いを始めた方がいまして……』

 そう言った橘さんの隣に見知らぬ男が立っている光景を思い浮かべた途端、どうにかなってしまいそうだった。

 嫌な妄想をかき消すように、残りのビールを一気飲みする。
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