ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「お疲れ様でした、黒崎さん」

 ボランティアを終えて、私たちは児童館を後にした。

「いえ、橘さんもお疲れ様でした」

「黒崎さん、疲れてないですか?」

「はい、全然大丈夫です」

 子どもたちを持ち上げる「力仕事」をしたにも関わらず、黒崎さんは疲れをまったく見せなかった。やはり身体を鍛えている人は、体力があるのだろう。

「そうだ、橘さん。このあと時間ありますか?」

「ええ、大丈夫です」

「ちょうどこの近くに、行ってみたいカフェがあって……良かったら、一緒に行きませんか?」

「え、ぜひ行きたいです!」

 黒崎さんのお誘いにすぐ乗ったものの、予想外に声が弾んでしまい、慌てて口を閉ざす。

(二人きりのデートだって思ってるのは、私だけなのに。……恥ずかしい)

「ありがとうございます。じゃあ、行きましょうか」

「っ、はい」

 とにかく落ち着きなさい!……と内心で自分を叱咤しながら、私は黒崎さんと共にカフェに向けて歩き出した。

(行ってみたいカフェって、どんなところかな? やっぱり、ケーキが美味しいカフェ……とか?)

 あれやこれやと考えを巡らしていると、五分ほど歩いたところで、黒崎さんは立ち止まった。

「着いた。ここです」

「……え?」

 目の前の可愛らしい看板を見て、私はつい目を見開いた。

 店の名前は、「森のケーキ屋さん」。幼児向けの絵本「ケーキ屋さんの一日」に登場する、ケーキ屋さんだ。
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