ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 庭に出ると、門の前には小学校からやって来た子どもたちが十人ほど立っていた。

「優花先生、久しぶりー!」

「ふふっ、久しぶりね。みんな春休みも元気にしてた?」
 
 私が門の鍵を開けると、子どもたちは元気に挨拶してくれた。春休みの期間中、私は予定が合わず学童ボランティアに参加していなかった。そのため、子どもたちと会うのはおよそ十日ぶりであった。

「……だれ?」

 子どもたちの視線が、私の隣に立っている黒崎さんのほうに向けられる。

「は、はじめまして」

 黒崎さんは、子どもたちに向けて挨拶した。声と表情に緊張が滲んでいるのが分かり、私はつい口元が緩みそうになる。

(私も初めて保育園の子たちに挨拶した時、こんなふうに緊張したなあ……)

 四年前の自分と黒崎さんの姿が重なり、そんなことを考える。

「……」

「あ、あら?」

 過去を懐かしんだのも束の間。私は黒崎さんと子どもたちの間に、異様な空気が漂っていることに気がつく。

 子どもたちは怖気づいたように、一様に顔を強ばらせていたのだ。

「っ、と、とりあえず、教室に入りましょうか! 今日のおやつはプリンですって」

「プリン!? やったあ!」

「急げ急げー!」

 場をとりなすように私が言うと、子どもたちは教室に駆けていった。

「あ、ありがとうございます」

「いえ……じゃあ、門の施錠をしてから、私たちも教室に入りましょうか」

(さっきは初対面だから驚いただけで……打ち解けていけば大丈夫よね?)

 一抹の不安を抱えながら、私は門の鍵をかけた。
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