ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


 そして私の不安は、見事に的中してしまった。

 おやつの時間に、黒崎さんはあらためて子どもたちに自己紹介したものの、子どもたちはやはり緊張したように身を固くしていた。どうやら背が高くて威圧感のある黒崎さんのことを、怖がっているようだった。

 おやつの後に外遊びが始まってからも、その空気が変わることはなく。今日はみんなでドッヂボールをすることにしたのだが、子どもたちはみんな、黒崎さんを絶対に狙わないのだ。

 黒崎さんと子どもたちの間には、目に見えない分厚い壁ができていた。

「黒崎さーん!」

 異様な空気を察したのか、おやつの後片付けをしていた北野さんが教室から黒崎さんを呼んだ。

「テーブルの移動をしたいから、手伝ってくれるかな? 代わりに外遊びは、中原さんに入ってもらうから」

 やんわりと北野さんは、黒崎さんに「戦力外通告」をしたのだった。

「……はい、すぐ行きます」

 黒崎さんは教室に走っていったものの、その後ろ姿は監督の指示でフィールドからベンチに戻されるサッカー選手のように、寂しげに感じられたのは、きっと気のせいではないだろう。
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