ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「じゃあさっそく、読みましょうか」
 
 そう言って、私は絵本の表紙を捲った。

 主人公のクマのお巡りさんは、パトロールをしたり、動物たちの喧嘩の仲裁をしたり、お話の最初から最後まで大忙しだ。しかし、そんなお巡りさんの活躍を見ると、読み手も自然とワクワクしてしまうのだった。

「だいぶ久しぶりに読んだはずなのに、内容をはっきり覚えているだなんて、なんだか不思議ですね」

 お巡りさんが迷子の子ネコと手を繋いで歩くページを見ながら、黒崎さんはぽつりと呟く。

「この本は、子どもの頃に保育園での読み聞かせで知ったんですけど……初めて読んだの時の驚きとワクワク感は、今でもはっきり覚えてます」

「ふふっ、クマのお巡りさんは、黒崎さんにとって憧れのヒーローだったんですね」

「そうかもしれません。柔道だって、『頼もしい警察官になりたい』と思って始めたんですから……ただ」

 少しだけ寂しげな口調になりながら、黒崎さんはページを捲る。すると次のページには、目付きの鋭いオオカミが姿を現した。
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