ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「自分はクマというよりも、怖いオオカミみたいな警察官になってしまいましたけど」

 作中、クマのお巡りさんと同じ交番で働く、オオカミのお巡りさんが登場する。

 オオカミのお巡りさんは、目付きが鋭くて大きく鋭い牙があるため、登場するキャラクターの中では唯一の「コワモテ」だ。

 彼は、悪さをするいたずらっ子を叱る場面にしか登場しない。困った住民を助けたりする役回りは、すべてクマのお巡りさんか、他の動物のお巡りさんなのだ。

「何言ってるんです、今日だって、子どもたちに大人気だったじゃないですか」

 たしかに、学童でのボランティアなど、黒崎さんが子どもたちに怖がられて上手くいかなかったこともある。

 しかし、黒崎さんは葉月ちゃんや翔くん、そして今日のボランティア先での子どもたちとの触れ合いを通して、間違いなく成長している。だから、落ち込む必要なんてないのだ。

「保育士だって、最初から子どもたちと上手に接することが出来る訳じゃないです。実習や経験を積んだ上で、色んなことを学んでいくんです」

「……橘さん」

「だから、焦らなくて大丈夫ですよ、黒崎さん」

 そう言って、私は黒崎さんに笑いかけた。

 きっと優しい黒崎さんなら、クマのお巡りさんのように皆から慕われる存在になれるはず。私にはそう思えた。

「っ、ありがとうございます」

「ふふっ」

 そこまで話していたところで、ちょうど注文していた品々が運ばれてきたのだった。
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