ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「はあ……」

 家に帰り、私は荷物を置いてベッドに倒れ込む。枕に顔を埋めて、何も考えず真っ暗闇の中で目を閉じる。仲良く寄り添う黒崎さんと宇城さんの姿が、頭から離れなくなっていたのだ。

 私と別れたあと、きっと二人は仲良く会話しながら帰ったに違いない。そんな光景を思い浮かべると、胸が苦しい。

「……っ」

 ちらりと机に目を向けると、夏祭りの時に黒崎さんからもらったクマのぬいぐるみと目が合う。私はベッドから起き上がり、両手で包み込むようにクマを握る。

(もし、黒崎さんと宇城さんが付き合っているならば……この子と今日の出来事は一体、何なのかしら)

 そんなことを思っていると、スマートフォンの通知音が鳴った。見ると、黒崎さんからメッセージが届いていた。

『橘さん

 今日も一日、ありがとうございました。

 帰り際、紫音がうるさくしてすみませんでした』

 苗字呼びの私と、名前呼びの宇城さん。そこには、明確な「違い」が存在した。

 震える指先で画面をスクロールすると、メッセージには続きがあった。

『言い忘れていたのですが、実は来月の市民祭で、パトカーの展示をすることになったんです。

 自分も展示の手伝いをすることになったので、予定が合えばぜひ遊びに来てください』

 黒崎さんからの、ボランティアではないお誘い。昨日までの自分ならば嬉しくて飛び上がっていたものの、今の自分には社交辞令に見えて仕方がない。

 ……それでも。

『こちらこそ、ありがとうございました

 シフトを見たらちょうど休みだったので、ぜひ行きたいです』

 諦めの悪い私は、黒崎さんにそう返信していた。
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