ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「陽太くんも警察のお兄さんも、笑ってください。撮りまーす。はーい」

 黒崎さんは、幼い男の子を抱っこして写真撮影の真っ最中だった。二人の写真をスマートフォンで撮影してるのは、男の子の母親だろう。

「良かったら、帽子被って撮りますか?」

「え、良いんですか? ぜひお願いします!」

「はい、どうぞ。少し大きいかな?」

 黒崎さんは自分が被っていた帽子を、男の子に被せてあげた。サイズがぶかぶかなので小さな頭から落ちそうになったものの、彼はすぐに片手で支えたのだった。

「よし、カッコ良くなった。じゃあ撮りましょうか」

「お願いします。陽太くん、もう一枚お写真取ろっか」

 男の子は黒崎さんを怖がることなく、むしろニコニコしていた。おそらく黒崎さんは、他の子の対応も上手くできているに違いない。

「ありがとうございました!」

「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました」

 親子に挨拶してから、帽子を被り直している黒崎さんを遠巻きに見ていると、偶然彼と目が合った。

「橘さん、来てくれたんですね!」

 嬉しそうに笑って、黒崎さんは言った。

「は、はい……お疲れ様です」

「ちょうどひと段落したところなんで、パトカー、一緒に乗ってみませんか?」

「え!? 大人もできるんですか?」

「もちろん。さ、どうぞ」

 黒崎さんにドアを開けてもらい、パトカーに乗車する。私が運転席に座ると、黒崎さんは助手席に座った。

「パトカーは内装も普通の車とは少し違うんです。良かったら簡単に説明しましょうか?」

「はい、お願いします」

「ありがとうございます、まず、ここに並んでるボタンはサイレンを鳴らすもので……」

 素人の私にも分かりやすいように、黒崎さんは詳しく説明してくれた。きっと先ほどの男の子も、黒崎さんの話を楽しんで聞いていたに違いない。
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