ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 黒崎さんは、もうひとりで大丈夫。私はそう直感していた。

「……と、こんな感じです。すみません、たくさん喋りすぎちゃって」

「いえ、とっても勉強になりました。ありがとうございます」

 黒崎さんに礼を言ってから、私はパトカーから降りる。すると、パトカーの乗車体験を希望する親子連れが、数組待機列に並び始めているのが見えた。

「じゃあ、私はこれで……! 黒崎さん頑張ってください!」

「ありがとうございます! お待たせしました、最前列の方ー!」

 私はそそくさとパトカーから離れ、黒崎さんはすぐに業務に戻った。

(黒崎さんが子どもたちと仲良くできるようになったのは嬉しいことなのに、なんで私はこんなに、寂しいんだろう?)

 保育士をしていた時、子どもたちが成長していく姿を見るのは、嬉しいことだった。苦手な野菜を食べられるようになったり、トイレを一人でできるようになったり。成長は寂しいものではなく、ただ嬉しいことだった。

 それが、今は違う。黒崎さんが成長したことの嬉しさよりも、彼に私が必要ではなくなった寂しさが勝っていたのだ。

「あら……もしかして、橘さん?」

「え?」

 名前を呼ばれて顔を上げると、宇城さんが立っていた。

「宇城さん、お久しぶりです」

 挨拶をしながら、私は宇城さんがビジネスカジュアルの服装で、ネックストラップを着けていることに気づく。

「うちの会社が企業ブースに出展するから、手伝いに来たの。橘さんは普通に遊びに来た感じ?」

「ええ、まあ……」

 宇城さんの後ろには「豊蘭(とよらん)自動車」と書かれた大きな看板が掲げられていた。
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