ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 驚いて振り向くと、私服に着替えた黒崎さんが立っていた。

「言い争いになってると思って来てみたら……これ以上、橘さんに迷惑をかけるな。分かったか?」

「っ、大和……!」

「自分がどれだけ酷いことを言ってたのか、頭冷やしてよく考えろ。橘さん、行きましょう」

「え、あっ……!」

 私を連れて、黒崎さんは歩き出した。彼の片手は私の腰に回されており、守るように身体の距離が縮められていた。

「く、黒崎さん、その……お仕事は……?」

「元々半日の予定だったんで、上がってきました。とりあえず、駅まで行きましょうか」

 私の背中を摩りながら、黒崎さんは落ち着いた口調で言った。

 肩同士が触れ合い、彼の温もりがすぐ近くにある。それもあり、守られているような安心感が感じられた。

「……」

 公園の門を出て、駅までの道を何も言わず進む。

 すると道半ばまで来たところで、水滴が肩に落ちてきたのだった。見上げると、いつの間にか空は曇天となっていた。

「まずい、降り出してきましたね」

「ウソ、私、傘持って来てないです……!」
 
「とりあえず急ぎましょう!」

 私たちは、駅まで駆け足で向かった。
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