ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「大丈夫ですよ。じゃあ、行きましょう」

「え、えっ……!?」

 傘を畳んでから、黒崎さんは私を連れて臆することなく入口へと向かう。

(どうしよう、門前払いされたら……!)

 しかし、私の不安は杞憂に終わった。ドアマンは私たちが入口の前に立つと、すぐにドアを開けてくれたのだった。

「じゃあ、予約取れるか聞いてくるので、ここで座って待っててもらえますか?」

「は、はい……」

 私がロビーのソファに腰を下ろしてから、黒崎さんはフロントに向かった。

「すみません、大人二人で一泊泊まりたいのですが……」

 黒崎さんがフロントのスタッフと話している間、私はホテルの中をちらちらと見回す。

 私たちが来たホテル、「ル・セレステ」は、アフターヌーンティーが美味しいことで有名なホテルだ。また、「一度は泊まってみたいホテル」として、頻繁に名前が上がっているのをよく見かける。

 ホテルの天井は高く、豪奢なシャンデリアが吊るされていた。

 床にはえんじ色のカーペットが敷かれており、ハリウッド女優が歩くレッドカーペットを彷彿とさせる。

 そしてソファの近くには、季節の花を生けた大きな花瓶が置かれていた。

(何だか……お姫様や王子様が住むヨーロッパの宮殿みたいだわ)
< 129 / 145 >

この作品をシェア

pagetop