ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「……」

 部屋に入り、私は言葉を失っていた。自分の目を疑ったのは、人生でこれが初めてかもしれない。

 黒崎さんが予約したのは、最上階にあるスイートルームだった。

 部屋にはキングサイズのベッドがひとつ置いてあり、ソファの前には大画面テレビが設置されている。そして窓際には、イスが二つとテーブルがひとつ用意されていた。

「すみません、この一部屋しか空いてなかったみたいで……」

 私のリアクションを見て、黒崎さんは申し訳なさそうに言った。

「いっ、いえいえ! 素敵なお部屋でびっくりしちゃっただけなので! ありがとうございます!」

 慌てて首を振るものの、内心ではすっかりパニックになっていた。

 ホテルのスイートルームは、一泊でも数万から数十万円かかると聞いたことがある。中には、百万円近くするホテルもあるらしい。

 私にはこの部屋が、数万円で済むとは到底思えなかった。

 宿泊代が割り勘だとしても、金額を想像するだけで、とてもじゃないが正気を保てなかった。

(それに、夕食も頼んじゃったから、それも追加料金かかるだろうし……クレジットカードの限度額超えたらどうしよう……!)

「夕食は窓際の席に用意してもらうので、荷物はソファに……って、橘さん?」

「その、黒崎さん。宿泊代がおいくらだったかだけ、先に教えてもらって大丈夫ですか?」

 このままでは不安のあまり一睡もできないと思い、私は思い切って質問したのだった。
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