ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「今日も一日、お疲れ様でした。乾杯」

「……乾杯」

 そう言って、私たちは炭酸水の入ったグラスを当てるように、手を軽く動かす。フォーマルな場では乾杯の時もグラスをかち合わせないというマナーを、先ほど黒崎さんが教えてくれたのだった。

「じゃあ早速、いただきましょうか」

「はい、いただきます」

 テーブルの上には、前菜からメインディッシュに至るまで、所狭しと皿が並んでいる。

 まず前菜は、『サーモンと季節野菜のマリネ~バジルソース添え~』。馴染み深いサーモンの味に風味の強いバジルソースが合わさって、とっても美味しい。

「美味しいですか?」

「はい……とっても」

「それは良かった」

 続いてスープは、『トウモロコシの冷たいヴルーテ』。ヴルーテがスープという意味なのは、ここに来て初めて知ったことである。

「トウモロコシの味がするのに口当たりが滑らかで、すごく美味しいです」

「ええ。ちなみにパンとも、よく合いますよ」

 「美味しい」という感想しか出てこないほどに、料理は絶品だった。美味しさのあまり、先ほどの不安もすっかり忘れて、私は手が止まらなくなっていた。

 そんな私を、黒崎さんは穏やかに笑って見つめていた。
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