ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「っ、すみません。お腹空いてたのもあって……つい、がっついちゃって」

「いえ。美味しく食べるのが一番ですから。気にしないでください」

 そう言って、黒崎さんはパンを一口大にちぎって、マーガリンを塗ってから口に放り込む。彼の一挙一動には、隠しきれない品の良さが滲んでいた。

 メインディッシュは、『真鯛のポワレ~広島県産レモンのソースと合わせて~』。鯛の皮がナイフで上手く切れずに悪戦苦闘する私とは対照的に、黒崎さんは順調に食べ進めていく。その所作は、なぜか見ていてドキドキするほどに美しいものだった。

「どうしました?」

「いっいえ……!」

 そうこうしているうちに、デザートと食後のドリンクを残すまでとなった。スタッフの方が料理の皿を片付けている間、私はぼんやりと外の景色を眺める。

 部屋は景色を一望できるように、一面ガラス張りとなっていた。雨が降っているので視界は良くないが、それでも夜景が十分に楽しめる。

 テーブルに食後の紅茶とデザートの『クレームブリュレ~こだわり牛乳のアイス添え~』が用意されたタイミングで、私は口を開いた。

「……黒崎さん」

「?」

「黒崎さんって……一体、何者なんですか?」

 私はストレートに、疑問をぶつけた。

「何者って、ただの警察官ですよ」

「そんな……絶対にウソですよね?」

「橘さんにはお見通し、か。そうですね、もう少し詳しく言えば……周囲の期待をたくさん裏切って警察官になった奴、とでも言いましょうか」

 自嘲気味に、黒崎さんは呟いた。
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