ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「このホテルを経営するリゾートグループ『阿光インターナショナル』の会長は、父方の祖父に当たります。そして社長は、俺の父親です」

「!?」

 つまり黒崎さんは、リゾートグループの御曹司ということになる。私は驚きのあまり言葉を失っていた。

「本来ならば、長男である俺がグループを継ぐ役目を担うものです。ただ……自分はどうしても、夢を諦められませんでした」

 最終的に、黒崎さんの妹がリゾートグループを継ぐことになったという。しかしそれまで、黒崎さんが夢と周囲の期待の板挟みとなって葛藤したことは、明らかだ。

「『警察官を選ぶなんて、もったいない』。親戚や知人から何度言われたかも分かりません。……橘さん」

「……」

「橘さんも、やっぱり『もったいない』と思いますか?」

 黒崎さんは、私を真っ直ぐに見据えて言った。

 正直、リゾートグループだとか、そういったことは私にはまったく分からない。ただ黒崎さんならばきっと、華やかな世界でも成功していくのだろう。

 しかし、私の頭の中に真っ先に思い浮かんだのは……。

 大手リゾートグループを率いる社長としての黒崎さんではなくて。

 警察の制服を着た‘‘お巡りさん’’の、黒崎さんだった。
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