ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「橘さん、怒ってます?」

「怒ってはないですけど、恥ずかしくて頭が爆発しそうです」
 
「そっか、だったら良かった」

「全然良くありませんよ、黒崎さんの嘘つき……!」

 そう言って、私は黒崎さんの裸の胸をポカポカと拳で叩く。しかし、屈強な身体はびくともしない。

 たっぷり「二度寝」を楽しんだ私たちは、一緒に入浴していた。具体的に言うと、たっぷり湯を張ったバスタブに、二人で身体を重ねるようにして入っている状況だ。

 疲れて動けなくなった訳ではないが、私が一人でバスルームに行こうとしたところ、黒崎さんが私をお姫様抱っこして、バスルームに連れて行ったのだ。

 結果、「一緒にお風呂」という状況になった訳である。

「足を滑らせて、転倒したら大変ですから」

「もう、子どもじゃないんですから……」

「ふふっ、好きな子を過保護なまでに大事にしたいっていう気持ちと、意地悪したいって気持ちは、もしかしたら紙一重なのかもしれませんね」

 私の肩に湯をかけながら、黒崎さんは笑う。そんな彼の姿を見て、私は怒る気力をなくしてしまった。

「明日からまた仕事で……しばらく会えないので、目いっぱい甘えさせてください」

 黒崎さんの言う通り、今月は二人のシフトがまったく合わず、次に会えるのはおよそ二週間後だった。

「寂しいですけど……今度会える日を楽しみに、『優しいお巡りさん』として頑張りますから」

 黒崎さんの言葉には、迷いが一切感じられなかった。やはり彼には、警察官の仕事が天職なのだろう。
< 143 / 145 >

この作品をシェア

pagetop