ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「接客が苦にならないなら、正社員を目指しても良いと思うよ。入社は早いほうが、昇進やキャリアアップの面でも有利だし……どうかな?」

「その、保育の短大卒で既卒ですけど、応募できるんですか?」

「もちろん。うちの会社、新卒以外の中途採用も積極的に行ってるんだ。特にエリア限定職なら転勤がない範囲でしか店舗の異動がないから、おすすめだよ」

「でしたら少し、興味あります」

 店長は、プリントに記載された募集要項を簡単に説明してくれた。

 スーパー「アシタバ」は大企業という訳ではないものの、正社員であればある程度の安定した給与や休日が手に入るようだ。特に給与は、保育士の時もらっていた額よりも高い金額となっていた。

 接客は嫌いではないので、待遇面でもかなり魅力的である。

 ただ、私の中には迷いが生じていた。

 もし正社員になれたならば、よほどのことがなければ働き続けることになるだろう。休みも取れるので、今みたいにボランティア活動にも参加できる。

 しかし、その道を選んだならば、保育士として復職することからは遠ざかってしまう。

 趣味として子どもと関わるのも楽しいが、保育士をしていた時のやりがいとは異なるものだ。私の中では、迷いが生じていた。

『あの時、橘先生が担任の先生で本当に良かったです』

 葉月ちゃんのお母さんに言われたひと言が、頭の中に響いた。

「……と、ざっとこんな感じかな。総務が説明会を定期的に開催してるから、参加すると詳しい説明が聞けるけど、質問があれば……橘さん?」

「え、あっ! 承知しました、ありがとうございます! 少し考えさせていただいて、よろしいですか?」

「もちろん。ご家族ともゆっくり話し合って決めるといいよ」

「ありがとうございます」

 私はぺこりと頭を下げて、事務所を後にした。
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