ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「……おお! 橘さん、うまい……!」

「っ、まだまだ……!」

 こよりがちぎれるまで釣れるのがルールなので、私はもうひとつ、紺色の水風船を釣り上げたのだった。

「ふふっ、良かった二つ取れて。黒崎さんおひとつどうぞ」

「え、いいんですか?」

「もちろん。……っ、ただ、何かどっちも地味な色ですみません」

 そう。あくまで私は「釣り上げやすい」を基準に水風船を選んだため、どちらの水風船も地味な色になってしまったのだ。

「何言ってるんですか。どっちも可愛いじゃないですか。橘さんは、黒と紺どちらが好きですか?」

 「可愛い」。「好き」。自分に向けて言われた言葉ではないのに、私は内心、妙に意識してしまう。

「えっと、だったら紺……で」

「じゃあ、黒もらいますね、ありがとうございます」

 私から水風船を受け取り、黒崎さんは嬉しそうに笑う。

 少しだけ触れ合った手の感触も、無邪気な表情も、私をドキドキさせる材料にしかならない。

 黒崎さんはただの、「友達」なはずなのに。

「次、どこ行きましょうか」

「し、射的か、わなげはどうですか?」

 平生を装いつつ、私は黒崎さんと次の屋台に向かった。
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