ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「そうですね……さすがに実戦ではまだ使ったことはないですけど、定期的に射撃訓練を受ける決まりにはなってるんです」

 実戦。黒崎さんがさらりと言ったその言葉には、言いようのない重みが感じられた。

 警察官という仕事柄、黒崎さんがこの先銃を撃たねばならない場面が訪れてもおかしくはない。無論その時は、相当な覚悟を要するのだろう。

「前にいた交番では、とんでもない修羅場によく遭遇していたんで、今まで使わずに済んでるのは運がいいなとは思ってます」

「ちなみに……前はどちらにいらしたんですか?」

「錦木町の交番ですよ」

「え……!?」

 錦木町とは、この地域から少し離れた都市部にある歓楽街である。お酒を提供する飲食店が軒を連ねているため、当然治安は良くない。

「道路に寝てる酔っ払いの対応ぐらいなら可愛いもんで……いかんせん、キャバクラとかホストクラブも交番の近くに多いので、客同士の喧嘩の仲裁とか、日常茶飯事でしたよ」

「……わあ」

「事情を聞いて落ち着いてくれたら良いんですけど、そうもいかなくて、逆上してくる人もいます。ちなみにこれ、割れたビール瓶を持って襲いかかられたときの傷です。避けきれなくて」

 黒崎さんは、自らの右のこめかみを指さして言った。よく見るとそこには、うっすらと小さな傷跡が残っていた。
< 58 / 145 >

この作品をシェア

pagetop