ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「その、やましい気持ちとはなくてですね、っ、本当に。信じてください……!」

(……何だか、可愛いかも)

 成人男性に対して可愛いと言うのは失礼極まりないと分かっていても、それが私の素直な感想だった。

「分かってますよ」

 私はそう言って、黒崎さんと手を繋いだ。

「た、橘さん……っ」

「たしかに、この人混みだとはぐれちゃったら怖いので、このまま連れて行ってください、黒崎さん」

 信頼していることをそれとなく伝えて、私は笑いかけた。

「し、承知しました……!」

「ふふっ」

 黒崎さんの手のひらは大きく、少し硬い感触はイヌの肉球に似ていた。

 手を繋いでから、彼は再び前を向いたものの、耳まで真っ赤になっているのが後ろ姿でも分かる。

(もし黒崎さんにイヌの尻尾が付いてたら、めいっぱい振ってくれてるのかな?)

 そんなことを考えながら、私たちは花火の会場まで手を繋いで歩き続けた。



 ドンッ、ドンッ!!

 ちょうど会場に到着したところで、花火は始まった。雲ひとつない濃紺の夜空に、いくつもの大輪の花が咲く。あまりの美しさに、私は圧倒されていた。

「すごーい!」

「ママ見て! さっき蝶々の花火が上がったよ!」

「たーまやー!!」

 丸い花火だけでなく、ハートや蝶々など変わり種の花火も打ち上がるため、周囲では幼い子どもたちが歓声を上げていた。
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