ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「……とっても綺麗」

 花火が打ち上がるのを見て、ぽつりと呟く。それとなく隣に立つ黒崎さんを横目で見ると、周囲が賑やかということもあり、私の声は聞こえていないようだった。

 ……と思っていると、不意に黒崎さんとばっちり目が合った。

 そして彼は、なぜか腰を屈めて私に片耳を向けてきたのだった。

「すみません、周りの音が大きくてちょっと聞こえなくて」

「い、いえ! 花火が綺麗だなと思って……大したことじゃないです……!」

 確実に聞こえるように、少し大きめの声で私は言う。

「ふふっ、そうですね」

 私の下らないひとことにも、黒崎さんはちゃんと答えてくれた。

 すると彼は、何かに気づいたかのように「あっ」と声を上げる。

「すみません! 手、繋ぎっぱなしだったみたいで……!」

 気づいていなかったが、私と黒崎さんは手を繋いだまま花火を見ていたらしい。彼はすぐに、パッと私の手を解放した。

「いえ、私も気づかなくて……」

 黒崎さんとの触れ合いが絶たれて、寂しさを感じている自分がいた。

 するとどこからか、こんな声が聞こえてきたのだった。

「ママ、あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、お手て繋いで花火見てたよ。なんで?」

「しっ……その、仲良しだからよ、きっと!」

「ふぅん」

 おそらく、幼い子どもと母親のやり取りだろう。それを聞いて、一気に顔が熱くなるのを感じる。

(さすがに黒崎さんには聞こえてない……よね?)

 しかし、彼の顔をちらりと盗み見ると、黒崎さんは赤面していた。

「……」

「……」

 何も言わず、二人そろって半歩距離をとる。

 気まずさのあまり、花火が終わるまでお互いに終始無言だったのは、言うまでもない。
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