ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女

二人の距離

「……」

 三歳の甥である翔くんは、驚いたように目を丸くして硬直している。どうやら彼は、私の言った「一緒に遊ぶお兄さん」が遠くからこちらに歩いてくる人だということに、気づいたようだ。

 一緒に遊ぶお兄さん。それはもちろん、黒崎さんのことである。

 子どもとのコミュニケーションは、第一印象が特に重要だ。つまりは、初めて話す言葉や表情が、今からの三時間を左右するのである。

 十時のおやつを食べたばかりで、昨日はよく寝たと聞いているので、翔くんはかなり機嫌が良い。最良のコンディションなので、あとは黒崎さん次第といったところか。

(さあ頑張って、黒崎さん……!)

 私は心の中でエールを送っていた。



 話は、昨日土曜日の夕方に遡る。

「美容院が明日しか予約取れなくって……! 旦那も休日出勤でいないから、翔のことを見ててほしいの。お願い……!」

 スーパーのアルバイトを終えて家に帰ってくるや否や、お姉ちゃんは私に頼み込んできた。

 いつも姉夫婦に用事がある時は、うちにいる両親が翔くんの面倒をみているのだが、生憎日曜日は外出する予定があったようだ。そのため、私に話がまわってきたのである。
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