ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「きゅーう、じゅう! 優花ちゃん、行くよ!」

「はーい!」

 私は翔くんと一緒に、黒崎さんのもとへ走り出す。すると黒崎さんは、小走りで逃げ始めたのだった。

「待て待てー!」

「待たないよ!」

 ギリギリ翔くんにタッチされない絶妙な距離を保ちながら、黒崎さんは逃げ続ける。かなり手加減してくれているので、私も追うのはかなり楽だ。

 このまま、キリのいいタイミングで黒崎さんが捕まってくれて終了……そんなことを考えていると、翔くんは突然ぴたりと立ち止まった。

「あれ、翔くんどうしたの?」

「優花ちゃん、優花ちゃん。お耳貸して」

 私がしゃがんで近寄ると、翔くんはヒソヒソと耳打ちしてきた。

「優花ちゃん。大和くんを捕まえるために、挟み撃ちしよ」

 びっくりして翔くんの顔を見ると、彼は何か企んでいるような、ちょっぴり悪い笑顔になっていた。

「え、え?」

「二人で別れて捕まえよ。いいね?」

 そう言って、翔くんは黒崎さん目掛けて走り出した。

(知らない間に賢くなっていくなあ……)

 私は言われた通り、挟み撃ちを狙うことにした。
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