ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「大和くん、待て待てー!」
 
「ははっ、ヤだよー」

 翔くんの様子を確認するために振り向きながら、黒崎さんは逃げ続ける。これはチャンスだ。

 私は黒崎さんが後ろを見たタイミングで、彼の前からそっと近寄った。

「わっ!?」

「ふふっ、捕まえた! っきゃ!?」

 芝生の中にあった浅い窪みに足を取られ、私はバランスを崩して黒崎さんのほうに倒れ込んでしまった。

「大丈夫ですか!?」

「は、はい……っ!? すみませんっ」

 反射的に、私は黒崎さんに抱きついていたのだ。慌てて離れるものの、今度は後ろに転びそうになる。

「ほら、危ないので……おわっ」

 私を助けようとして、黒崎さんも窪みに足がはまってしまった。そのまま、二人そろって芝生に尻もちをつく。

「あいたたた……大丈夫、ですか?」

「ええ……ん?」

 よく見ると、尻もちをついた黒崎さんの服を、可愛らしい手ががっしり掴んでいた。

「ぼくも大和くん、捕まえた!」

 得意げに言って、翔くんは笑った。

「っ、捕まっちゃったな」

「ふふっ」

 誰からともなく笑い始め、芝生には三人の笑い越えが響いたのだった。
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