ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 ちょうど川の傍に畳一枚分ぐらいの大きさの岩があったので、私と黒崎さんは隣合って座った。

「今日は、野郎三人が騒がしくしてすみません」

 荷物を置いたところで、黒崎さんはぽつりと言った。

「え?」

「何と言うか……ダチ二人とも、女の子と話すのが楽しいのか、テンションが上がってて……バーベキューの時も、うるさかったでしょう?」

 どうやら黒崎さんは、バーベキューで騒ぎすぎたと思っているらしい。彼は申し訳なさそうに、眉を寄せていた。

「いえいえ! 桃子も実夏も楽しんでましたし、私も楽しかったですよ!」

 実際、黒崎さんだけでなく香坂さんや加賀見さんの話はどれも面白かったのは事実である。

 それに、二人とも気配りができる人ということもあり、大人数でいてもまったく気疲れしなかったのだ。

「私が口下手なので、たくさんお話を聞けて嬉しかったです」

「……だったらいいですけど」

 私が笑いかけると、ようやく黒崎さんは安心したような表情になった。

 ふと私が足元に目を向けると、平らな石が落ちていた。見ると、それ以外にも平らな石が河原にはたくさん落ちているようだった。

 平らな石。それは水切りで遊ぶのにピッタリのものだった。

 試しに一つ川に投げてみると、石は二回水の上を跳ねたのである。

「っ!? 橘さん、水切り上手ですね」

「ふふっ、色々コツがあるんですよ。せっかくなんで、水切りで遊びませんか?」

 こうして私たちは、水切りを始めたのである。
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