ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「っ、しっ、失礼しました……!」

 ひとしきり喜んだところで、黒崎さんは我に返ったかのようにパッと身体を離した。彼につられて、私も慌てて後ずさる。

「いっ、いえ……私こそ、ワガママを言ってすみません」

「っ、俺は嫌じゃないですけど……」

「え?」

「なっ、何でもないです! あっ、そろそろ時間なんで、バンガローに戻りませんか?」

「は、はい」

 ぎこちない空気を引きずりながら、私たちはバンガローに戻ったのである。



「バーベキュー、楽しかったですね」

「また今度、みんなで来ましょうよ。秋はバーベキューのメニューも、だいぶ変わるみたいなんで。焼きリンゴとか焼きイモとか」

「たしかに、美味しそうですね」

 運転席に座る香坂さんと、助手席に座る桃子は、仲良さげにそんな話をしていた。

 帰り道、車内には和やかな空気が流れていた。それは皆が「デートの時間」を十分に楽しんだことの表れだった。

「まあ君が今日撮ってくれたリスの写真、めちゃくちゃ可愛い。スマートフォンのロック画面に使っていい?」

「いいけど、そんなに気に入った?」

「ふふっ、嬉しい。このリスちゃん、まあ君にそっくりだなあと思って」

「待って、どういうこと……!?」

 真ん中の列の席では、実夏と加賀見さんがそんなやり取りを繰り広げていた。二人はどうやら、森の散策と写真撮影を楽しんだようだった。
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