ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 行き道と同じく、車内には賑やかな話し声が絶えない。

 しかし私は、遊び疲れたからか、睡魔と闘っていた。

(このまま寝るのは、運転してる香坂さんにも失礼だし……何とか起きてなきゃ……!)

 太ももを抓ったり、飲み物を飲んだり。寝ないように努力するものの、瞼は勝手に下りてくるばかりだ。

「橘さん」

「はっ、はい……?」

 私が寝ないように背筋を伸ばしたタイミングで、黒崎さんは耳打ちをしてきた。

「高速抜けるまでだいぶ時間かかりますし、寝てて大丈夫ですよ」

「で、でも……さすがに申し訳ないというか」

「あいつ、運転は好きだけどそういうことは気にしないタイプなんで、平気ですよ」

 香坂さんのほうに目を向けながら、黒崎さんは言った。

「解散場所に着く前には起こしますから、安心してください」

「じゃあ……お言葉に甘えて」

 そう言って、壁側に頭をくっつけようとしたところ、私はゴツンと壁に頭を打ってしまった。

「いてて……っ」

「ふふっ、こっち側にもたれかかってくれて良いですよ」

 黒崎さんの提案に内心驚いたものの、私は睡魔には勝てなかった。

「っ、じゃあ少しだけ、失礼します」

「おやすみなさい」

(お付き合いしてる人がいるかとか、何も聞けなかったけど……楽しかったな)

 そんなことを思いながら、私は睡魔に溺れていった。
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