警視正は彼女の心を逮捕する
 ……当たり前だけど、翌日の私は一躍ときの人となった。

 普段、そんなに騒がしくない修復室。
 けれど今日はいかにも用事があって通りすがった、という人がひょいとのぞいては、ヒソヒソ話していく。

「あの人が」
「公開プロポーズの」

 切れ切れだけど、言われている言葉は予想できる。

 穴を掘ってブラジルに行ってしまいたい。
 ……その前に、頑強な床材をドリルできる道具を見繕わなければならないけれど。
 コンクリートだったら、なにかの溶剤かければ分解するかな。
 現実逃避をしてみる。

「やったね、藤崎さん! 君は修復品と介護婚するのかと思ってたよ!」

 室長に祝辞? をもらってしまった。
 むうう、と頬を膨らませる。

「そんなつもりは」

 私にだって、描いていた未来予想図くらいある。

 伴侶とお揃いのエプロンを着て、家事を一緒に行う姿を脳内シアターに呼び出した。
 ……なぜか思い描いた旦那様が鷹士さんになってしまい、慌てて上映を中止する。

「しかし。暇さえあれば、収蔵庫か修復室にいる君が、どこでどうやってメンズを捕まえてくるの」

 室長が好奇心まるだしの顔で聞いてきた。
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