警視正は彼女の心を逮捕する
「期待しているところ悪いけど。通行の支障になっている、動くよ」
「き、期待なんて!」

 してません、と抗議し終わることなく、あっけなく連れだされてしまう。

 車に誘導されて、さすがに今回は自分でシートベルトをする。
 ……つもりだった。
 見つけられなくて、わたわたしていると、す……と鷹士さんが体を傾けてきて、嵌めてくれる。
 いつも綺麗にまとめられている前髪がぱらりとこぼれたところが、色っぽくてドキドキする。

 カチリ。
 ハッと我に帰る。

「で? 『いくら口説こうとしているから』ってだっけ?」

 にっこり微笑まれた。

「聞こえてるじゃないですか」

 私の声、不機嫌そうに聞こえるだろうな。
 でも、この近距離イケメン攻撃に、無愛想にしていないと耐えられない!

「俺が君の一挙手一投足を見逃すとでも?」

 下から覗きこまれる。
 艶のある、黒真珠のような双眸が私を見つめてくるので、どうしようもなく体温が上がっていく。

「わ、たし。イケメンアレルギーなので近寄らないでください……」
 
 症状としては動悸、息切れ、めまい。紅潮して意味不明なことを叫び出しそう。
 やっとの想いで喘げば。

 くっくっく……と空気が震える。

「日菜乃、だいぶ俺に素を見せるようになったね」
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