警視正は彼女の心を逮捕する
「日菜乃」
 
 守るよ、というような声と同時に目の前が暗く、いい匂いに包まれる。
 一瞬、ざわわ……という不穏な雰囲気が生まれる。

「うっわ、あざとい」
「顔がだめだからって、こび売りまくりじゃない」

 ここでクエスチョン。
 なぜ、モブの私まで集中砲火を浴びているのか。
 ファイナルアンサー、鷹士さんにがっちり抱きしめられているから!

 あ。

「わかった」

 呟くと、鷹士さんが問い返してくる。

「なにを?」
「モテるの対策ですよね」

 最適解だ。

「ん?」

 私は顔をあげて自説を展開する。
 彼も私の瞳を覗き込んできた。
 どきん。

「鷹士さんはなんでだか、美術に興味が沸いた。でも、一人で鑑賞していると、お近づきになりたい女性に群がられる」

 口調が震えているの、気づかれませんように。

「まあね」

 否定しないあたり、イケメンでモテメンな自覚あるんだ。

 ……鷹士さんは、悠真さんと並んで地元のイケメンツートップ。

 たしかバレンタインデーは、校門に他校の生徒も大勢混じって二人を出待ちしていたと聞いた。
 鷹士さんは家を突き止められないよう、宗方の家で時間を潰してから帰っていた。

 ……宗方家は心が折れそうな門構えに、シェパードが常時お庭を徘徊ではなくお散歩しているから、業者を装ったストーカーも犯罪者も記者も入れないので。
 卒業式のたびに学生服のボタンは全てなくなっていたそうだし、以下同文。

 悠真さんは女子からだけだったけど、鷹士さんはプラス後輩男子からもねだられたらしい。

 ……そんな彼が社会人になって、大人の男性独特の色気を手に入れた。
 エリートなのに、優しくて気遣いできる。
 顔だけではなく、心もイケメンなんだもの。
 モテ街道爆進するしかないでしょう、いままでもこれからも。

 ……ちりっと胸の奥が焦げたような気がしたが、無視。
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