警視正は彼女の心を逮捕する
 ハッと気がつく。
 これ、角度的には癒着しているように見えるのでは?
 しかもここ、美術館!

「鷹士さんっ」

 私が焦りまくっているのに、鷹士さんは動じた様子がない。

「だーめ」

 なにがだめなの?

「聴衆にしっかりとご理解頂かないと」

 なにを?
 疑問に思っていると、鷹士さんは周囲に聞こえるような声を出す。

()が、日菜乃の虫除けだってことを」

 私は目を見開いて固まってしまう。
 言うにことかいて、なんて大嘘!
 
「あのですね、鷹士さん。私に、虫除けなんて」

 必要ない。
 と、最後まで言いきれず。

「君は俺の獲物だから」

 俺だけが日菜乃を喰らえるんだよ。
 ……そんな副音声が鷹士さんの双眸から放たれた気がする。

 食 べ て

 瞬間、思ってしまった感情を、理性が力技で黙らせる。

 これは私が免疫ないから、のぼせてるだけ!
 もう、悠真さんのときのように勘違いしない。
 決意すると、すう……とお腹の中が冷たくなっていく。

 多分、顔も無表情になってしまったのだろう。
 私の温度の低さを補おうとするせいか、鷹士さんの声がいっそう熱をおびる。

「いまさら、他の野郎に手をつけられるなんて、冗談じゃない」

 え。
 耳にしのびこんできた声には、嫉妬や独占欲も混ざってる?

 冗談だよね。
 私、『他の野郎』さんからは、壁か空気あるいは観葉植物。
 よくて、喋る修復マシーン扱いですが?
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