警視正は彼女の心を逮捕する
「新婚旅行はイタリアにしよう。師匠達にご挨拶しないとな」

 鷹士さんが腕枕をしながら言ってくれた。

「え? 警察官も長期お休みを取れるの?」

 職業的に無理だと思っていた。

「取れるよ? 最近、『働き方改革』もようやく浸透してきたから」

 なんと。

「ただ」

 国政選挙を控えている
 重大な犯罪が起きてしまった
 サミット等の国政クラスのイベントがある

 といったことがあると、出国を禁止されたりするという。

「……なるほど……」

 確かにそういうとき、警ら中の警察官が多くなるなあとぼんやりと思い出す。
 私の職場はお濠端なので、確かに警戒が顕著かも。
 納得。

「だが、コンサートの警戒みたいに臨時バイトを募るということは出来ない」
「え? 道路の人達、みんな警察官なの?」

 そうだ、と言われて驚いた。
 
「訓練が追いつかないし、民間には漏らせない情報もある」

 交通整理も大事だが、重要なのはテロの警戒なのだと。
 ……TVの向こう側の出来事が目の前に迫っている。

 多分、私は青ざめているのだろう。
 鷹士さんが抱きしめてくれた。

「怖がらせた。だが、警察官(わたし)の妻になるということは、どういうことか知っておいてほしい」

 わたし(・・・)
 目の前のひとは、夫ではなく警視正だった。
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