警視正は彼女の心を逮捕する
「後出しだったな。面倒になったか」

 すまなそうな声に、ううん、と頭を横に振る。
 私もネットで『警察官と結婚するときの心構え』を調べていた。

 家族から犯罪者を出してはいけないとか。
 
 警察官だけではなく、公務員であれば災害時に家族の傍に居られないとか。
 ……被災者であっても、救援側として動かなければならないのだと。

「私の気構えが甘かっただけ」
「ありがとう。日菜乃を悲しませることなしないし、君を手放しはしない」

 キスがひたいに落ちてくる。
 くすぐったく受け止めて。
 かねてからの疑問をぶつけてみた。

「……どうしてあんなに人がいるの?」

 普段、警察署にはあれだけの人がいるってこと?

「あれは、四十七都道府県互いに応援要請をしているんだ」

 人を借り出したら、地方のイベントにお手伝いに行かなければならないと。

「そう言われたら、納得……」

 私が理解したのをわかったからか、ありがとうと囁いてくれた。

「あとは根回しは必要だけど」

 旅行前には、何人もの上司に延々とハンコをもらいに行ったり。
 飛行機の行き帰りの便名やホテル名なども記載しなければいけないらしい。

 いつ招集がかかるかわからないから、所在地を把握させるためなのだと。

 話を聞いて、私は血の気がひいた。
 がば、と彼の腕の中から飛び起きる。
 裸だったけれど、ベッドの上で正座した。

「新婚旅行、国内でいいです!」

 
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