警視正は彼女の心を逮捕する
 イタリア行きは惜しいけれど、旦那様に負担をかけてまで行くことはない。
 いざとなったら、自分一人でもいけるのだし。

 ……一人で行くことを新婚旅行とは言わないか。
 
「なんで敬語と正座?」

 私が気張っていると、鷹士さんは笑った。

「俺もたまには外国に行って、羽根を伸ばしたい。……それに」
 
 色っぽい瞳で見つめられて体温が上がる。

「ほうっておくと、日菜乃は一人で新婚旅行をしてしまいそうだし?」

 バレていた。
 バツの悪そうな顔をして見せると、抱き寄せられた。
 腕の中にしまい込まれて、拗ねているような声を出される。

「奥様を大好きな夫を置いて行くなんて、酷すぎないか」

 ですよね。

「……ごめんなさい」
「日菜乃、連れてって」

 冗談っぽく言われたあとに、キスが顔中に振ってくる。

 嘘つき。
 私を師匠に会わせてくれるのが目的なくせに。

 ……彼は私のためなら平気で嘘をつく。
 無理をさせないようにしないと、と思った。

「他にも、外務省の渡航情報で危険レベルが高い国は行けない」
「なるほど」

 いちいち頷ける。

 国政選挙も終わり、サミットなど警察官が出国を禁止されるようなイベントもない時期を見計らって、イタリアへ新婚旅行となった。
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