警視正は彼女の心を逮捕する
「そういえば、鷹士のことだけれど」

 鷹士さんのことまで知っているの?
 しかも呼びすて。
 私の旦那様と綾華さんは、どんな関係なのだろう。

 途端、胸が黒い炎で焼かれているようにチリチリする。

「今の彼は捜査二課にいるでしょう」

 びくん、と体が反応してしまう。

 彼の役職まで把握している。
 ……落ち着くんだ、私。
 鷹士さんは警視正だもの、たぶん広報など調べればわかるはず。

 でも、動揺を隠せない。
 バックミラーに映っているだろう歪んだ顔を、綾華さんに見られたくなくて顔を伏せる。

「だけど彼、芸術オンチなのよね?」

 鷹士さんが芸術に苦手意識があるのは、宗方のおじ様や悠真さんなら悟っている。
 綾華さんは悠真さんの妻だもの。
 二人から聞いていて、おかしくはない。
 必死に自分に言い聞かせる。
 
「なのに今、彼が扱っている事件は」
「言わないでください!」

 綾華さんがなにを知っていようが。
 『守秘義務がある』とあれだけ言ってる人の仕事を、私が知っている必要はない。
 彼が大変な仕事に携わっていると、理解しているだけで充分。
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