警視正は彼女の心を逮捕する
 ……おうどんはとても美味しかった。
 せめてものお礼で食器を洗っていると、インターフォンが鳴った。

「日菜乃ちゃんの荷物、到着したそうだ」
「あ!」

 どうしよう。まったりするより先に、トランクルームを手配しておくべきだった! 
 私が慌てふためいているのに、なんと鷹士さんは「空いている部屋に」と指示してしまう。

「鷹士さん、あの」
「ごめんね、八畳だと小さいかな」

 しょんぼりと謝られてしまい、大急ぎで否定する。

「ううん、十分! ……じゃなくて」
「とりあえず、うちでいいよ。今さら場所変えしても業者を混乱させるからね」

 そうかもしれない。けれど、甘えてしまってはダメな気がする。

「あ、あの!」
「これが最善の策」

 だからといって私が別案を考えられないでいるうちに、荷解きも済んでしまった。
 ……業者さんが退室してから、『私の部屋』であらためて彼に向き合い、頭をさげる。

「鷹士さん、なんとお礼を言ったらいいか」

 ひとまず、悠真さんの部屋に私の痕跡はなくなった。

 でも、これから部屋探しをしなくちゃ。
 職場に近いところで、資料や道具を置ける広さ。
 お家賃っていくらが妥当なの? どこの沿線がいいんだろう。悠真さんと交通経路が被らない所にしないと。

 
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