警視正は彼女の心を逮捕する
「徹夜しちゃった……」

 カーテン越しの朝日が目の中に暴力的に入り込んできている。
 頭はガンガンに痛いし、フラフラだった。

「だめだ、死ぬ」

 とりあえず、私達の家に帰って寝よう。
 ……もとい。鷹士さんの家からいつ出るかは、起きたら考えればいい。

 私はゾンビみたいになって通用口から出た。
 途端に。

「藤崎日菜!」

 男性に大音量で呼ばれた。
 え。
 ゆっくり振り返る。
 知らない人だ。

「お前のせいで俺はっ」

 鳩がびっくりして飛びたっていく。
 男性の声は警備室まで届いたみたいで、中で待機している警備員さんがなにごと? って顔をしている。

 げんなり。
 また、このパターン。

「『二度あることは三度ある』って本当だったんだ……」

 通用口から出てはいけなかった。
 あまりに学習能力のない自分を恨む。

 でも今回は不可抗力。
 無意識だったとはいえ、どのみちこの時間はお客さん用出入り口は閉まっているんだもの。

 こうなれば『三度目の正直』とやらだ、名乗り返してやる。

「賀陽日菜乃です」

 もう少ししたら、本当に『藤崎』に戻ってしまいそうだけど。
 ……どうしよう。
 両親に縁を切られた挙句、『藤崎に戻ってくるな』まで言われてしまうかもしれない。
 その場合、鷹士さんの苗字を名乗らせてもらっていいのかな?

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