警視正は彼女の心を逮捕する
 と、いうことは。
 私はバッグの中の手で、携帯を録音状態にセットした。

 ふふふ。
 私の携帯ってね、タップ一つで録音できるように設定してあるのですよ。

 だって、師匠ってば。
 チャットしてるのに、途中から通話アプリしてくるんだもの。
 彼女の一言一言が修復士にとって金言そのもの。
 おかげで録音する癖がついている。

 それにしても鷹士さん、仕事早いなー。
 やっぱりメッセージ読んでくれたんだ。
 よかった。
 ……冷えた胸が少し温まった分、文句をいいたくなる。

「返事くれないのは仕方ないけれど、せめて既読にしてくれたって」

 徹夜テンションのまま、大きな声で独りごちてしまう。

「なにを一人でぶつぶつ言っている! 人の話を聞けっ」

 怒鳴ってきたって、負けないんだから!
 目が据わっている自覚がありつつ、口を開く。

「あなたが【群青】の贋作を指示したんですね?」

 私の問いかけに、男の人はう、と詰まる。
 決定だ。

「なんでそんなことをしたんですか。見る人を裏切るなんて、超絶悪いことです。本物はどこですか」

 こんなこと聞いても教えてくれないだろうに、矢継ぎ早に質問してしまった。

「うるさいうるさいうるさい!!」

 あなたのほうがうるさいです。
 言い返すことは出来なかった。
 彼の手に、ギラギラと光る白刃が見えたから。
 
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